2015年8月号<健康経営>

“従業員の健康” を“経営資源” と捉え、企業が従業員の健康づくりに積極的に取り組んで“業績拡大” を図る経営スタイルのことを「健康経営」と言います(※)。「企業の安全配慮義務」の観点から一歩進んで、「従業員のモチベーション向上や生産性改善による業績拡大」の観点から考えてみても、“従業員の健康づくり” への取り組みの意義は非常に大きいと言えます。

生活習慣病やメンタルヘルス不調などによって欠勤や休職されると、企業は、生産活動の低下、代替要員の確保、労働災害の発生、企業イメージの低下といったダメージを被ります。欠勤や休職に至らずとも、心身不調のまま仕事をされると、仕事の質の低下、対人関係の悪化、不稼働時間の増加といったダメージを被ります。例えば、持病と生産性の関係を調べたアメリカの研究によると、うつや不安障害の労働者の生産性は36.4%低下、偏頭痛持ちの労働者の生産性は23.4%、アレルギー持ちの労働者の生産性は18.2%低下するという結果が出ています(ダウ・ケミカル社調べ)。

本号では、「健康経営のすすめ」について特集しています。

※「健康経営」はNPO 健康経営研究会の商標登録です。



解説編

@「DBJ健康経営格付」融資

□「従業員の健康維持・増進を積極的に行っている企業」を対象に、企業の健康経営に対する取り組みを評点化し、融資条件に反映。
□「DBJ健康経営格付」融資の評価項目
・法定措置(労働時間・健診など)
・法定を上回る措置(生活習慣病など)
□健康経営格付企業の共通点
・トップダウン
・全社横断的な推進体制

A健康経営銘柄
・経済産業省と東京証券取引所による「健康経営銘柄」の新設
・「健康経営銘柄」の評価指標…経営理念や教育研修
・「健康経営銘柄」選定企業の取り組みと健康数値への効果

Bデータヘルス計画
・データを活用した効果的・効率的なアプローチ
・健保組合と事業者とが協働で取り組む疾病予防

C労働安全衛生法上の事業者の義務
・事業場規模別・業種別の安全衛生管理体制
・健康診断や面接指導

Dストレスチェック制度
・ストレスチェック制度導入に向けた準備
・ストレスチェック実施上の留意点

E企業が活用できる公的な産業保健サービス
・産業保健スタッフ向けのサービス
・小規模事業場向けのサービス
・ストレスチェック義務化に向けたサポート

Fメタボリックシンドローム    
G肩こり
H腰痛
I疲れ目
JVDT症候群
K熱中症
L感染症
M睡眠トラブル
N受動喫煙



資料編

健康づくりへの取り組み
・労働者の健康管理対策の重要課題は「定期健康診断の完全実施」「定期健康診断の事後措置」「職場環境の整備」など
・メンタルヘルス対策の取り組み内容は「労働者への教育研修・情報提供」や「事業所内での相談体制の整備」など 


判例編

精神鑑定を含む健康診断の受診勧告は違法か


連載編

@歌に見る日本人の心(日本人事労務研究所 所長 久保淳志)
第4回 人の心を和ませる懐かしき明治時代の歌

A公正な賃金(明治学院大学 名誉教授 笹島芳雄)
第87回 非正規社員の公正処遇(5)