2025年11月号<標準生計費と物価指数>


2025年の賃金改定では、前年に続き多くの企業が高水準の賃上げを実施し、定期昇給に加え、ベースアップも定着しつつあります。しかしながら、消費者物価の上昇はなお根強く、実質賃金は十分に回復していません。円安やエネルギー・原材料価格の高止まりがコストを押し上げ、価格転嫁の難しさから「賃上げを続けたいが余力がない」との声も聞かれます。

こうした環境下で、賃金見直しの拠り所となるのが「標準生計費」と「物価指数」です。「標準生計費」は、“標準的な生活”を維持するための費用水準であり、公正な賃金のモノサシです。「物価指数」は、そのモノサシがどの程度伸び縮みしているかを示す指標です。標準生計費(水準)と物価指数(変化率)を組み合わせることで、モデル賃金・初任給・定期昇給幅などの見直しに役立てることができます。

名目賃金を上げるだけでなく、地域の生活実態と支出構造、そして物価動向を踏まえた賃金水準の検討が一段と重要になっています。本号では、各地域の「標準生計費」と「物価指数」の動向を整理しました。持続可能性と生産性の向上の両立に向けた人事・賃金施策設計の一助となれば幸いです。





資料編

地域別の生計費と物価指数



判例編

1.教育職員から事務職員への配転命令と賃金差は違法か

2.同性パートナーを扶養配偶者と認めないのは違法か

3.社宅貸与の総合職限定は間接差別か


コロナストレス

連載編

新時代の労働と賃金 (明治学院大学 名誉教授 笹島芳雄)

第9回 女性の活躍と企業経営